新反動主義ーーーNeoreactionism(NRx)とは、にわかに活発化している、英米を中心とした反民主主義的思想で、日本における「ネトウヨ」のアメリカ版とでも言えよう。現地では、オルタナ右翼とも言われている。
しかし、日本のネトウヨと大きく異なるのは、その思想的・哲学的基盤が確固として存在することだ。
新反動主義者として有名なのは、なんと言っても、ペイパルの創業者でベンチャーキャピタリスト、フェイスブックの外部投資家としても有名な実業家、ピーター・ティールである。彼やその他の新反動主義(NRx)者と言われる人たちの基盤にあるのが、イギリスの哲学者 ニック・ランドの「暗黒啓蒙」の思想と、右派リバタリアニズムだ。
右派的ポジショントークと、左派的言説への脊髄反射的な反論に終始し、思想的・哲学的ロジックが崩壊している日本のネトウヨたちは、理屈が通じないという意味で厄介な存在だが、民主主義を信じるフツウの人々にとって、ネトウヨよりはるかに手強いのが、この人たち、NRxを信奉する新しい知識人・実業家・政治活動家たちである。
彼らは、平等や民主主義という近代的理念は、もはや人類になんの益ももたらさないと信じている。むしろ、VR(バーチャルリアリティ=仮想現実)やAR(オーギュメンテッド・リアリティ=拡張現実)などテクノロジーと、医療技術を用いたエンハンスメント(人間能力のドーピング)といった科学技術を極限まで発展させ、マリフアナなどの麻薬を解禁することで、人々の幸福と社会の維持の両立が可能になると信じている。徹底した自由思想と進化論を基盤とした冷徹だがリアリティのある世界観により、信奉者は知的階級において目下増殖中である。
もはや、近代か、脱近代か、なんて気の抜けた様な議論をしている段階ではない。NRxやオルタナ右翼に対抗するためには、民主主義や基本的人権といった、古臭い概念の現実的有効性を、再度示さなければならないはずだが、その可能性は、残念ながら非常に低いと言わざるを得ない。
近未来の恐ろしい現実をどのように受け入れるか。彼らと同調するか、抵抗するか。いずれにせよ、早い段階で、現実を「見て」おく必要はあるだろう。
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